<Introduction>

Miyaji Premium Line(以下、M):今回はいろいろとご面倒をおかけしましてありがとうございました。
飛澤氏(以下、):とんでもないです。久しぶりに実機をイジって僕も面白かったですよ。ハードウェア的にはヘッドホンとかイヤホンとか多いですが、この手はすっっっごい久しぶりですよ!ハードウェアの機械。

M:そうなんですか!飛澤さんは、elysia mpressorのプラグインが出ているのはご存知ですか?
飛:知ってます!

M:使われたことはございますか?
飛:使ったことはあります!AAXしか対応していないですよね?モバイルシステムの方で10を使っていて、こっちの方に結構入っているんですよAAX。その中にElysiaも入っていて、それは使った記憶があるんですがそちらはまだ細かく検証はしてませんでしたね。


elysia Plug-ins
上からmpressor,museq,alphacompressor


M:elysia自体はドイツのメーカーだということはご存知だと思いますが、実物をご覧になったのも初めて?
飛:初めてですね。

M:見た感じいかがですか?
飛:500シリーズはレイアウトが縦になっていて扱いやすいという印象がずっとあります。
このサイズでコンパクトにまとまっているのが、横になっているよりかは分かりやすいですよね。
そういう意味では500シリーズのサイズって僕は好きですね。
扱いやすいと言うか、元々卓って縦ラインじゃないですか。
上から信号が降りてくる感じって感覚的にあるので、縦に並んでた方が生理的に安心出来ます。

M:500シリーズはアメリカだとものすごく盛り上がっていて、様々なガレージメーカー/有名メーカーからモジュールがリリースされてますし、APIのLunchboxに入れて持ち歩くのが一般的になっているんですけれども、日本だとイマイチそこまで盛り上がってないと思うんですね。
飛:そうですね…

M:それはなぜなんでしょう?
飛:僕の中では、わりとアメリカ自体、ハードウェア好きな人達じゃないかと思うですよね、そういうのを直につないで直感的にやるような。
多分日本のエンジニアなんかもそういうタイプの人は多いと思うんですね。
そういう人がこういうハードウェアをどんどん使って直でつないで最終的にデジタルに入れるとかそういう風にしている人が多いと思うんですけれども、日本でいまいちウケてない理由ってのは多分一つにはDTMが安価で普及しちゃった影響はすごくあると思いますね。
要するにハードウェアじゃなくても2〜3万でプラグイン揃えれば何個も挿せちゃうっていう利点があるじゃないですか。
そうすると若いエンジニアとか、自分の家で趣味でやっているような方たちの中では、ハードウェアにお金を払わなくてもソフトウェアで、例えばこれに10万円使うんだったら10万円分のプラグインを買おうかとか…そっちに行くんじゃないかな〜って気はしますよね。

M:う〜ん、なるほど…そうですか〜…今お話伺ったのはわりとコンシューマーよりと言うか、そういった状況の方たちも含んでいると思うんですけれども、割とプロの方とかでも同じアウトボードがラック版であったとすると、ラックの方に行っちゃう方が多い感じなんです。
その理由をお伺いすると、Lunchboxの電源などが関係していて、同じものだったらラックの方がいいよっていう方が多いような感じがするんですよ…!
電源を含めたその辺はいかがでしょうか?実際に使われてみて。
飛:僕はその辺、あまりこだわりがないです。
500シリーズの電源はBoxに依存する、言い換えれば全然別のメーカーですよね。
そのBoxと500モジュールのマッチングが良ければ、聴いて良ければそれでいいと思います。
ハードウェアのこっちのメーカーの方がいいのかAPIのLunchboxに入れたelysiaがいいのか、そういう選択ですよね。
電源うんぬんというよりは機材を通して聴いた時に自分が好きな音が出るのか出ないのか、感覚的にその音が好きか好きじゃないか、そこに尽きるんじゃないですかね。
これを一度聴いて試してみて、あ〜いいじゃん!ってなればそれで良いと思います。

M:それでは、今回のelysiaの場合、見た目も含めてどんな感じを第一印象で持たれましたか?
飛:第一印象はすごくやる気にさせますよね。
さっきも言いましたけど縦に並んでる感じも好きなので、デザイン的にもすごくいいと思いますし、好きな感じという第一印象です。

M:日本では500モジュールに限らず、elysiaのハードウェアが入っているところって僕ら自身ほぼ見たことが無いんですね、スタジオを含めまして。
飛:無いですよね!僕も無いです。


M:個人の方で持たれている方は何人かいらっしゃいますが、今回、僕らの方でもこれが来てパッと聴いてみただけの印象なんですけども、非常にクオリティが高いので、なぜ日本で普及しないのかっていうのがあったんですけど、飛澤さんなりになにかその辺の理由って考えられたりしますか?
飛:メーカーのネームバリューとかも大きいかもしれませんね。わりと日本ではNEVEだとか、ハードウェアだと王道を買っておけば安心みたいなのがあるじゃないですか。
こういう新進メーカーの方にはなかなか行きにくいかなぁという気はしますよね。
後はそういうのを貪欲に試す機会がないとか。

M:そこは大きいかもしれないですね。
飛:立地的に東京に住んでいて、こういったハードウェア扱うお店に10万、20万円持って、自分の好きな一番のものを買おうと思って試しにいくとか、そういう土壌がないとネット、例えばelysia本国の製品紹介動画を見て『あ〜このコンプ良い!』とかね、なれば『あぁ買ってもいいかな』ということになるかもしれないですけど、かなり冒険ですよね!
自分の好きなエンジニアが使っていて『いいぞ』と言っているとか、そういう確実な後押しが無いとなかなかね(笑)
例えばNEVEは、世界どこいっても有名なエンジニアが使っているので確実なものであり、ネームバリューもあるのでハズさない(笑) そういった信頼を勝ち得るまではかなり時間がかかると思うんですね。
そういう意味ではelysiaを良いと言うエンジニアが多分、日本で10人は必要だと思います。

M:そうですね。僕らはエバンジェリストと呼んでいるのですが、そういった方が現れていただけると良いなとは思っています。
飛:そういう海外のエンジニアが何人もelysiaが良いと言って、日本のエンジニアが使い出すとか、それで初めて安心して通販でも買えるところまで行くのかなぁと、そこにはまだ至ってないのが現状でしょうか。

M:ちょっと長い道のりが必要かも知れないですね。クオリティが高いもの、日本ではあまり知られていないもの、日本では手に入りにくいもの、というのを中心にMiyaji Premium Lineというのを展開していくというのがありますので、まさにelysiaは合致しているかな思い、今回お願いさせていただいんですね。
飛:これって1モジュール10万円ちょっとですよね?
この値段でこのクオリティが手に入るってのは、僕としては嬉しい価格ですね。感覚的には20万円ぐらいの感じはしますよね。
例えばこれでコンプはNEVE買いましたってなれば30万円超えるじゃないですか。
それからしたら、かなりクオリティもコストパフォーマンスも高いと感じますね。
音のアタック感とか抜けとかNEVEとはキャラクターは違いますが、骨格がしっかりした部分とかそういう意味においては引けを取らない。
ハードウェアを久しぶりにイジってみて『ハードウェアっていいな』って思いましたね。
回しているツマミの感覚とかプラグインじゃ絶対に出ない音の感覚とかそういうのは確実にありますね。
そういったNEVE等のハードウェア、実機といったものに通ずるニュアンスはこのelysiaの中にありました。





<xpressor 500>


M:NEVEのお話が出たので、それを比較対象というわけではないのですけれども、定番的なコンプであるとかフィルターであるとか含めて1つずつご感想をお伺いします。…一番左がxpressor…
飛:xpressorですね。
これで一番面白いのがサイドチェインフィルターでしょうね。
使ってみた印象なんですけれど、普通のサイドチェインというと他から持ってきた音源に対してどうチェインするかという意味合いだと思うんですが、xpressorのサイドチェインというのは全然意味合いが違っていてコンプがかかる周波数帯をフィルターをかけてバイバスしているんですよ。
これを一番左に回してフルにしておくと、例えばドラムの2ミックスとかだと音圧のかかっているキックとかまでドーンとかかるので、かかりが鋭くなる、キツくなる。
そして下の方の周波数帯をカットしていくと低域にはコンプがかからないのです。
割と上の周波数帯だけカツンというかかり方がするのでこれはなかなか面白い機能ですね。
コンプがかかる周波数帯を可変できるというのがすごい面白い。普通のコンプとはここが違いますね。
あとミックスバランスを変えられるというのもすごい良いですね。
ガッツリかけた後にミックスバランスで(アタック感?ディティール?)調整することもできるし…後はログリリース!他の良くある、ナローにスパッと落ちていくオートリリースと違って、ログカーブを描いて落ちていくイメージになるので効きがすごく自然になる。
このログリリースがあるというのはとても面白いですね。

それとゲインリダクション・リミッター。
レシオとの関連で右に回していくほどリミッターに近づいていくんですね。
普通のコンプにリミッターがついているようなイメージで右に回していくとスカーンとレベルが止まる、コンプとリミッターを2段掛けしているようなイメージをこのツマミで可変できるのが面白いですね。この2つのツマミとログリリースが面白い印象でした。

M:サウンド的にはどんな印象でしょうか
飛:通した瞬間に、あ〜ヌケ良いな!と感じました。でバイパスした感じと全く変わらない。逆にちょっとかけていくとアタック感がスカーンと出てきて良いですね。印象は素晴らしい。
中のアンプが良いんでしょうね。

M:僕らの方で聴いた第一印象というのは破綻しないなと。
飛:そうですね!破綻しないですね。
いい意味で破綻させるのがこっち(nvelope)なんですけれど(笑)とっても自然にもかかるし、過激にもかかるし、リミッティングもできるし、わりとそのあたりのコントロールが自由自在で現代的です。
どんなふうにもできる。NEVE33609とは180度違う。
でも骨格がしっかりするという意味ではちゃんとキャラクターを持っている。その上で色々コントロールできるというのが素晴らしいですね。
しかもどんなにかけても音が痩せていかない。
破綻しないというのはそういった意味でもあるんでしょうね。激しくかけても破綻せずに味が残る。

M:もし飛澤さんがお使いなるとしたらどんな場面でしょうか。
飛:やっぱりインサートでドラムの2ミックスか、ミックスの最終段にかけてマスタング的に使っても面白いですよね。
レシオを2対1ぐらいでバッコリかけてミックスバランスで調整するとか、使い方もいろいろ出来て面白い。なにかの2ミックスという感じにはなるのかなと。
特にドラムなどわりとアタック感のある音源にはとても効果的だと感じてます。



M:ボーカルとかギターとかには…
飛:使えるでしょうね! パキンと音の骨格が良くなるので例えばギターとかヘッドアンプがあってその後に使うと間違いなく音ヌケが良くなりますね。
かかり方が自由に効くのでボーカルにも使える。オールマイティですね。
キャラクターは持っているし、パラメーターの可変が多彩なのでかゆいところに手が届く、コンプとしてはかなりつぶしがききます。
スタイリッシュかつ洗練されていて、出音はこのツマミの感じなんですよ。
すごいしっかりしている。ほんとに見た目通りの音がします(笑)


<x_flter 500>


飛:(あまり印象に残っていないなどの雑談後…)
とにかく効きが鋭いですよね。
ナローカーブでも広い感じかと思ったんですが、グワッと切れますよね。
プラグインでは滅多にお目にかかれない切れ方です。
高域をズバッと切ったとき、その下の帯域が自然と持ち上がるオールドEQのようなキャラクターも好印象です。
EQとしても良く出来ていますが、Qが狭くならない特性を活かして高域を自然に持ち上げたり、逆にズバッと切ったりとフィルター的に使いたいですね。
イメージとしてはEMIのEQに似ています。
高域なら高域、中域なら中域なら、低域なら低域と感覚的にフィルターできますし、サウンド・メイキングする上で、Qポイントをスウィープさせることでエフェクティブにも使えて好印象です。


<nvelope 500>


M:エフェクティブといえば、僕らの印象ではnvelopeが一番そのイメージでしたがいかがでしょうか?
飛:これは面白かったですね!
アタックフリークエンシーをイジると、どの帯域のアタックを強くするかがコントロール出来て、例えばアタックAを100ぐらいにすると、ドラムのステムを通すとパコーンとアタックの部分だけを抽出してくれる。
逆にアタックSを強くしていくと、アタックの後リリースしている部分をグワッグワッと上げるようなことが出来る!これは面白いですよね。
ドラムのステムなどをを利用してこういったエフェクティブなパートを作るとかかなりアバンギャルドなサウンドが作れるのですごいですよね。
フルレンジモードはすごく自然なかかりになるのでこれも良いですね。

M:飛澤さん的にはどんな場面で使われますか
飛:僕はもうドラムのステムですね。
xpressorいった後にnvelopeいって味を出していく使い方がすごく面白い。
ステレオリンクを外せば左右で違うかかりもできるので、左はパコーンとアタックを抽出して右はサスティーンをドゥワンドゥワンという風に『どうやって作ってるの?』というサウンドもこれを使えば作れますよね。

M:僕らの方ではパラメーターが細かくイジれるSPL Transient Designerみたいなイメージもあります。
飛:そうですね。キャラクターも付けられる。
また、全シリーズともに素通しの音が全く痩せないので、この回路を通って悪くなることは無くて逆に良質なアナログ回路を通ることで空気感が良くなる。
素通しの感じだけでも印象が良いです。

M:僕の個人的な印象なんですが、前述2つの製品は空気感を調整するようなアウトボードの印象で、nvelopeはグルーヴを調整するアウトボードという印象です。
飛:まさにおっしゃる通りです。
アタックとサスティーンを適切に調整することでグルーヴ感も付けられます。
API Lunchboxの電源とのマッチングも良いですね。


<飛澤氏による総括>

飛:今回、ハードウェアの良さを久しぶりに味わったのが印象が良くて、自分自身『DAW外に出すとこんな音になるんだ』っていう部分を再認識しました。
昔、NEVEのモジュールにステムで出してやっていたころ、アナログを通してTDしていたころの感覚を思い出しましたね。
外に出してアナログ回路を通る意味っていうのもとても重要だと感じましたし、そこでキャラクター付されるというのも別のミックスになる感じも良かったな思います。
最終的なマスターをDSDに録ったりしていますが、アナログを通すのもありだなと感じました。
僕はいつもPro Toolsの最終段にテープシミュレーターようなプラグインを何発か使うのですが、それでもやっぱり模倣でしかないというか、アナログ回路を通ったようにはならないので、そういう意味ではこれらが一発通るだけで説得力のあるアナログ感が出るなと感じましたよね。
そういう意味では僕にとってはとても新鮮な感覚であって、DAW内で完結する制作手法の人たちにもこの音の変化というのを感じて欲しいですね。
一回試すだけでも違いが分かると思うので、試してみるのも面白いと思います!

M:ありがとうございました!!


飛澤正人 -Masahito Tobisawa-
Dragon Ash や SCANDAL、Gackt 、THE野党(新藤晴一 from pornograffitti / SHOCK EYE from 湘南乃風 and Atsushi)などを手掛ける。
生のバンドサウンドとブレイクビーツをシームレスにミックスして創り上 げる空間表現に定評があり、早い段階からコンピューターを使ったサウンドメイキングを積極的に取り入れ てきた。更にアコースティック楽器の録音も得意とし、ジャンルを超えた幅広い音楽に適応することができる。
2008年には市ヶ谷にプライベートスタジオ Flash Link Studio をオープンさせ、アーティストと共にプリプロ から楽曲制作をするなど、一歩踏み込んだ音楽制作を可能とする拠点を築いた。
近年はアレンジや作曲、 サウンド&レコーディング・マガジン誌の連載やレビューを多数執筆するなど活動の場を広げ、また年に数 回、音響系専門学校で特別授業を行い、後進の指導にも力を注いでいる。 音創りの信条は、アーティストの感性と自らのイマジネーションを融合し、作品の深層部に入り込むこと。

http://www.flashlink.jp/