宮地楽器神田店HOME > レコーディング機器 > スタッフレビュー > マイクレコーディング最前線!with KENJI NAKAIギター編。
エレキ編
まずは、エレキギター編です。

エレキギター編は、皆様が聞き慣れているアンプが良いだろうということで、大定番『Marshall/JCM2000 DSL』に大村さんのメインギターを直接繋ぐ、所謂『アン直』でこれぞMarshallといった歪サウンドをNAKAIさんがセレクトしたマイクで収録して行きます。
Royer Labs/R-121
☆某日11:00時過ぎ、本日のエンジニアNAKAI KENJIさんと個人的にも親交の深いギタリスト大村真司さんが揃い、簡単な挨拶と共に早速のプロ同士のやりとりがスタートしました!



NAKAI KENJIさん(以降、NAKAI):なんだか、(モニターに来ている)音が細いなぁ…

スタッフ澤田(以降、澤田):ほんとですか?逆に、R-121って結構低音が出るマイクですよね?

NAKAI:そうなんだけど、なんでだろう?元音聴いてみましょうかね?(ヘッドフォンを外しアンプの方に)

NAKAI:や、っというか・・・アンプの出音が全然細い。もっとガツッと来た方が良いです。まず思いっきり音量を上げてみましょう!

☆いきなりのアンプの出音への厳しい突っ込みが入りました!やはりマイクやミックスでうんぬんの前に出音が肝心!ということで、レコーディング用にセッティングしていた大村氏のギタリスト魂にも火がつき、実際のプロの現場の様な空気感が一気に濃くなりました。何回かのテストレコーディングを繰り返し、本日レコーディングされる音のデフォルトが完成!シンプルかつ最も重要な要素に時間を掛けたスタートになりました。

〜調整を終えて〜

☆まず、最初にリファレンスとして、NAKAIさんが最も愛用されているRoyer Labs/R-121になります。

NAKAI:早速、一発録って聞いてみましょうか?

一同:はい。

★R-121を試聴


NAKAI:うん。いつも通りの音だ!(狙った通りに聞き慣れているR-121の音が録れている様子。)

大村:今使ったやつね。すげー音いい。

澤田: R-121って、ローミッドがしっかりしてるから、これに『Shure/SM57で上の方のジャリっとした所をちょっと足して』なんてよくやりますよね!

大村:そうだよね。57と2本で録りたいね。

澤田: それだけでもういい音するからね。

NAKAI:僕は基本的に、1本のマイクで音を作ります。マイクのポジションだけで理想に近づけて行く感じです。その方が位相の問題等も含めてしっかりした音が作れるからね!

一同:流石…

Royer Labs/R-101
NAKAI:次にRoyer Labs/R-101行ってみましょう!

★R-101試聴中


大村:R-121の方がなんか落ち着いてる。余裕がある感じだね。

澤田: そうね。R-101はもうちょっと若い感じがしますね。

大村:なんか、高域が若干強いというか。

NAKAI:R-121の方が音が太いですよね。

澤田: うん。でも音いいですよね。

NAKAI:もう一回弾いてもらっていいですか?マイクを2cmくらい(スピーカーに)近づけてみた方がいいかも知れない。

澤田: うんうん。

★R-101_2cm近づけてみました。


澤田: ちょっとミドルが出てきましたね。でも、やっぱなんかR-121の方が説得力がある。

NAKAI:そうね、全然良い!

大村:ねぇ、全然良いっすね!(一同、R-121の良さを再認識しました。)

NAKAI:ただね、僕はこのR-101をライブのレコーディングによく使うんですよ! 

一同:あぁーなるほど。

NAKAI:ライブのときは、もうちょっとコーンに近づけるんです。それでもう少し端に寄せると結構R-121っぽい音になるんです。R-121をライブに使うのはちょっと心苦しくて。

澤田: 確かに怖いですよね。

大村:ライブだとそっちの方が逆にパリッとしそうだよね。リッチ感とか。

澤田: この間ね、爆音のアンプでレコーディングやったらR-121のリボンがヘタっちゃったんですよね。

一同:(笑)

澤田: ライブ用のR-121Lにすると、やっぱり音違うんですか?

NAKAI:やってみましょう。

Royer Labs/R-121L
★R-121L Rec&試聴中


NAKAI:もう少しマイクの位置を変えてみようと思います。

★R-121L_1cm近づけてみました。


NAKAI:やっぱり似てるな。若干R-121Lの方がタイトな気がしますね。

澤田: R-121Lの方が、もう少し音にボディがある感じがしますね。

大村:でも、こっちの方がちょっと後ろにいる気がするよね。

NAKAI:うん。でも不思議と遠くならないんだよね。

澤田: なぜ、前とか横とかにマイクの位置を動かしたんですか?

NAKAI:前に近づけることで、中低域が増えるいわゆる”近接効果”を狙って動かします。今のTAKEは、若干"甘い"感じの音がしたので、基本的なポイントより少しだけセンターキャップ(スピーカーの中心)に近づけたんです。

澤田: そうすることで、”音にエッジ"を足したってことですか?

NAKAI:そういうことです。!1cmでこれだけ変わる!多分聴き比べたらもっとわかると思いますよ。

★R-121LとR-121L_1cmを聴き比べ中



大村:音が近くなるな。

澤田: 近いし、エッジも効いている。

NAKAI:弾きはじめのアタックがちょっと出てくるよね。

大村:よりニュアンスが出てますね。

NAKAI:これが【1cmの違い】です。

澤田: マイクの位置でこれだけ変わるんだから、適当に録った音にEQとかCompを掛ける音を弄る前にマイクのポジションにとことん拘れってことですね!

大村:いやーもう、素でしょ!素が一番大事だからね!!

NAKAI:そうですね。やはりそれが基本中の基本です!

Audio-Technica/AT4047MP
4047 澤田: 次に、NAKAIさんの最近のお気に入りのAudio-Technica/4047MPに変えると、どんな感じになるんですか?

NAKAI:あー、面白いかもしれないですね。やってみましょう!

澤田: 普段こういう結構歪んだ音にAT4047MPって使いますか?

NAKAI:歪んだ音にはあんまり使わないですね。どっちかって言うとクリーンやクランチの時に使いますね。このマイク、最近発見したんですが、良いんですよ〜。

澤田: AT4047MPって、失礼ながらも型番としては結構渋いんですよね。

NAKAI:うん。まだあまり売れてないらしいんだよね(苦笑)でも多分これから売れる様になると思いますよ!このマイクだけ他のモデルと全然違うキャラクターを持ってるんですよ。

澤田: へぇー。さぁ、どんな音がするんでしょうか!?

★AT4047MP視聴中


NAKAI:若干固めになりますね。

澤田: コンデンサーっぽいというか。若干ラインっぽい音がする。

NAKAI:これで、後1cm外かな。

澤田: やっぱり、コンデンサーだとこういう上の方の俗に言うライン臭いところがでちゃってますね。

大村:さっきみたいなリボンの音の方が、なんかギターリストが喜ぶ音がするかな。

★AT4047を1cm外側にしました。


NAKAI:結構好きかも。

澤田: 有りっちゃ有りですよね。

大村:いい!!太い!ガッツある。

澤田: グランジっぽい。

NAKAI:うーん。いいじゃん!!!好きかも俺。こういうの。

大村:リフが完全にグランジだもんね。

一同:(笑)

大村:ジミヘンからワンコードかえるとグランジになるよね。

NAKAI:これいい感じに古くさくないですか?(笑)

一同:いい。いい。いい。

NAKAI:それこそ、ツェッペリンとかあの辺の感じ。

澤田: ミドルの解像度の良くない感じが、逆にちょうどいいのかもね。NIRVANAとかみたいに。

NAKAI:ある種アナログっぽいですよね!

大村:ギターは、そういう方のがいいんですよね。中域にグッときて。ドラムとか結構デジタル臭くなってきたから。

NAKAI:ギターの場合、そんなにレンジが広くなくていいから。その代わりに密度感がねガッてきた方がね。

大村:空気感が良いね〜!

澤田: ちなみにマイクで録音するときの入力レベルって、どのくらいを基準にしているんですか?ピークで-3dbとか-5dbとか?だいたいで良いですけど。

NAKAI:どうだろ、-4dbくらいですかね?

澤田: -4dbぐらいを残してるんですね?ですよね!なんかね、違うんですよ。0dbギリギリで録るみたいな間違ったずっと信仰がずっとあって(苦笑)

大村:俺、それやっちゃってるから(笑)

一同:

大村:最近なんかぁ、ヘッドルームを結構取って録音して、後から持ち上げるのが良いっていうよね。それ、ホント最近だよね。だって、つい最近までみんな言ってたよ。『0dbギリギリに録るのが基本』って……

澤田: 雑誌とかに書いてあることを鵜呑みにするから……『ちゃんと音聴いて録ってる?歪んでるし、クリップしてるんだけど……』っていうデータが届くことが多くて。自分で責任をもって作業してれば、気づくはずなんだけどな。

一同:まあまあ(笑)

MOJAVE/MA-300
澤田: 次はNAKAIさんが気になってるMOJAVE(モハヴィと読みます。)に行ってみましょうか?

NAKAI:MA-300をやってみましょうか?

澤田: MA-300ですね。はい!俺、何年か前のNAMM SHOWで初めて見たときからずーっと"モジャベ"だと思ってた。

NAKAI:"モジャベ”(笑)、"モジャベ”の方が可愛いのにね。

大村:俺、"モジーブ"だと思ってた。違うんだ。

澤田: どうやら違うんだよ。"モハヴィ”なの。”J”を読まないらしい。

NAKAI:スパニッシュだからね!

大村:そうか!アメリカ人じゃないのか。

澤田: モハヴィ砂漠ってのがあるんでしたっけ?

NAKAI:そうそうそう。LA.のちょっと北側のあたり。海外ではよくブランド名とかに地名つけてますよね。

★MA-300 Rec&試聴


NAKAI:予想通りの音がしたから、大丈夫(笑)皆さんも試聴してみてください。

澤田: まぁコンデンサーマイクだから、こういうライン感が出ちゃうよね。

大村:そうね、若干ラインっぽいね。

澤田: こういうキャラクターなんですか?

NAKAI:うん。3khzあたりをトップにダラーって上がってる感じです。ただそれを予想してはじめに外側にマイク立てちゃうと比較にならないと思ったので、まずいつも同じポジションに置いて、録音レベルも同じにして録っています。なので、この後にもう1cm外ってのをやりましょう。あ、このまま録ると結果が同じになっちゃうから、ちょっと待ってください!

大村:同じ位置なのに違うねー!とか言ってね(笑)

NAKAI:あるある。

大村:俺そういうパターンだわ。一緒じゃないって思いながらも『ちょっと違いますね!』ってみたいなね(笑)

澤田: 『こっちの方がミドルの感じがなんか違う…』とか言っちゃう(笑)

NAKAI:やっぱり1cmじゃなくて、2cm外側に移動してみましょう。

★MA-300_2cm外側にしました。


NAKAI:なかなか元気のある音ですね。

大村::嫌いじゃない。カラっとした音!

NAKAI:こっちの方がさっきよりいいですね。さっきは、ちょっと明るすぎたし。

大村:今はコーンに近づけたんですか?

NAKAI:いや、センターから外に動かしました。

大村:外側にですか?

NAKAI:今はほとんどコーンを録ってる感じです。

大村:なんか、モコっとしたところが減りましたね


NAKAI:エッジがあるけど余計なシャラシャラ感が無いので、オケとかが入れば丁度良くなりますよ。ライブでもね、グっとフェーダーをあげるだけでこの音になるから楽なんですよ。

大村:あぁ。

NAKAI:ライブでリボンマイクを使う時は、大体この辺のポジションで使います。フェーダー上げるだけであの音が出てくるので、後はサウンドチェックしてる間にちょちょっと修正するだけで良いんです。

大村:最近はNAKAIさんみたいに全体のバランスのことを考えてPAする人が減ってきた気がする。ギターだけでは良い音、ドラムだけでは良い音。で、合わせたときにノラない音・・・とかね。1個1個が良い音でも、最終的な音で人をノラせないとだめだよね。

NAKAI:特に歌とかぶったときが重要ですね。

大村:そうですよね。海外のライブハウスとかだと、ギターが『ギター!!』ってなってても、歌が入ってきたらスって消えるもんね(笑)でもそれが逆に良かったりするんだけど、日本だとほぼそういうのを経験したことが無い。海外でLIVEするとそういうテクニックとか凄いなぁて思う。

NAKAI:こういうマイクプリもそうだけど、その音の『美味しいところ』ってのがあるんですね。

大村:はいはいはい!

NAKAI:で、マイクのアウトが大きいからといって、ゲインを下げると全然良くないんですよ。アンプもあるじゃないですか、これくらい鳴らした時の鳴りが、このアンプの1番美味しい鳴り方をしているってやつ。

大村:なるほどね。このセッティングがいいってやつね。

NAKAI:だから音が大きすぎるからといって、アンプ側でそれを下げちゃうのは違うと思います。逆にエンジニア側のフェーダーを下げてでも、その音を使った方が説得力のある音が出たりするんですよね。

大村:まぁ、結局出音&録り音が全てっていうか。そこに合わせて録り方を変えるのがベストって事だよね。

NAKAI:そうなんですよね。やっぱりアンプとかっていっても、ギターからのこのセット自体でひとつの生楽器なんで、まずそこに良い音があって、そのプレイヤーが良しとした音のイメージに限りなく近いまま、こういう普通のスピーカーから出せると言うことが目標です。

一旦脱線し、Audio-Technicaのマイクをついて
NAKAI:あっ、これも試さなきゃね!!僕、これをね、ギターに試したことがないんですよ。

澤田: Audio-TechnicaのAT4081ですね。

NAKAI:そう。僕のフェイバリット・スネアマイクなんです。

澤田: これはねぇ、良い音しますもんね。

NAKAI:これはね、スネア素晴らしい音するんです。

澤田: Audio-Technicaは良いマイク多いんですよ!でも、Audio-Technicaのリボンってあんまり浸透してないんですよね。音良いのに。

大村:ないんだ(笑)

澤田: 日本人はどっちかと言うと高域が強めなヌケの良いとされる音が好きだからね。このヌケの良い丸さがあんまり伝わらないみたいなんです。後、新しいブランドのマイクを試す印象があまり無いですよね。

大村:でも、向こうのエンジニアの人はオリジナリティーがないとやっていけないじゃないですか?だからガンガン試してますよね。

NAKAI:後、新しいものって比較的安いものが多いのもあるかもしれません。まぁ、バッチリ高いものは置いといて、向こうでAudio-Technicaって評価高いんですよ。僕は、本当にRoyerとMojaveとAudio-Technicaでほぼ全て録ってます!

澤田: ドラムやピアノもですか?

NAKAI:ドラムもピアノも録りますよ。歌は、ヴォーカルに合わせてちょっと違うのを使っていますけど。最近ね、Audio-Technicaの四角いダイヤフラムのモデルも使ったんですよ。

澤田: AT5040ですか?

NAKAI:の細いほうですね。

澤田: AT5045ですね。

NAKAI:そうAT5045!あれをねぇ、サックスに使ったら最高に良かったから、今度はあれを歌に使いたいと思っています!まぁ、悪くないだろうぐらいに思ってたら、サックスのキーンっていうとこが全部うまく収まって、抜けがいいんだけど、ふわってする。たぶん、ナイロンギターとかにもかなり合うはず!
これはね、日本でももっと評価されて欲しいですね。

澤田: 僕も好きなんですよね〜。AT5045と生楽器は凄く相性が良い気がします。

Audio-Technica/AT4081
★AT4081視聴中


NAKAI:いいな。

澤田: いいですね。

NAKAI:R-121の方が下の方がありますね。グォーンっていう、でもそこから上の方は結構似てるかもしれない。

一同:うんうん。

澤田: 流石Audio-Technica。まじめな音って感じ。

NAKAI:うん、まじめ!

大村:たしかに。確かに言う通り。

澤田: ですよね?几帳面な人が作ったんだろうな〜って。

大村:確かにロックな感じではないね。

澤田: それ、Audio-Technicaのマイク全てに言えるじゃない(笑)

NAKAI:逆にR-121が名機なんですよ。ラック(好運)なんです、これ。

大村:ラック!?グッド・ラックなんですか!?

一同:

NAKAI:僕が信じてることが一つあって、スピーカーもマイクも名機はラックから生まれるんですよ。皆さん、スペックと想いがあって作るじゃないですか?でも、絶対に100%思い通りには出来てないんですよ、きっと。で、たまに偶然狙い通り以上の製品が出来るんですよ。R-121はまさにそういう感じなんじゃないかな。

大村:演奏と一緒だね。いやー、今の絶対ないでしょ!!っていう演奏がめちゃくちゃ良かったり。

NAKAI:楽器作りもそうですよね。えっ、アソコのメーカーなのになんでこんなに良いの?とか。

大村:それが、7万ぐらいだったりね(笑)でも、そのギターめちゃくちゃ良い音だったりね。

NAKAI:でも、そのメーカーの他のモデルを試したら全然良くなくて。その1本だけ良かったりね。だからまぐれってあると思うんです。

大村:半田ちょっとで音がかわるって言うからね。

澤田: まぐれじゃなかったら、同じもの作れますもんね。

大村:まぁね。

NAKAI:後ね、ラックもあって生まれた名機をなんとか改良しようとするから、どのメーカーもなかなか自社の代表作を超えられていない感じがするんですよね。

澤田: 深い。

Manley/VARIABLE-MUを使用した理由
澤田: そう言えば今のうちに聞いておきたいことが・・・なんで、VARIABLE-MU(Manleyのコンプレッサーで通常ステレオで使われることが多いモデル)を通してるんですか?通した質感が好きだからですか?

NAKAI:ん?シンプルに音がいいからですね!

澤田: 凄いほんの少ししか(GR:ゲイン・リダクションが)フレてないですよね。

NAKAI:うん。それは、VUだから振れてないだけで、これがデジタルメーターだったら結構反応してるはずです。

澤田: なるほど。

NAKAI:これで、ピークで6dbくらいです。

澤田: 本当ですか!?そんなにいってるんですか?

NAKAI:厳密にはね!VUメーターの値は定数があるから反映されてないだけです。

澤田: ダイナミクス云々よりも音作りの一環としてそれくらいかけてるって事ですかね?

NAKAI:そうそう。むしろ、粒立ちを持たせる為に通しています。

澤田: VARIABLE-MUをモノラルのギターのレコーディング時に通すなんてほとんど見たこと無いですが、通す事でより好みのサウンドになるんですか?

NAKAI:これが有るとね、こういう比較のときに実は色んな意味でわかりやすいんですよ。

澤田: 倍音の伸びが良くなって、よりキャラが分かりやすいとかそういうことですか?

NAKAI:インプットをガツっとあげると確かにそう言う状況なんですけど、そんなにあげてないんです。むしろ全体的にうまくレンジが収まる感じ。暴れてるところがうまく収まるんです。

一同:ほーう。

NAKAI:歌はこれがあったら絶対これ使う。

澤田: 歌にも使うんですか!?

NAKAI:歌こそこれです!!僕の場合、歌には1176を使わないですね。1176は、ギター以外ほぼ使わない。

澤田: なるほど。でも、日本だとほとんど1176通すじゃないですか?

NAKAI:1176って、インプットを上げるとコンプレッサーが深くかかるけど、その分アウトプットが上がるから下げなきゃいけないですよね?VARIABLE-MUだったら、もう少しコンプレッションを掛けたかったら、スレッショルドを下げればいいだけだから、シンプルなのも理由のひとつです。

Royer Labs/R-122
澤田: では、次に行きます。

NAKAI:はい。次はR-122ですね。

★R122視聴中


澤田: これは、歌とかにも使えそうですね。

NAKAI:そうですね。

澤田: 中域に独特の密度感がありますね。

大村:好きかも。

NAKAI:うん。おそらく、こっちのがハイファイっていうよりも『正しい音』をしてると言えるかも知れません。基本構造はR-121とほぼ同じで、アンプがアクティブになってるんですよね。アクティブになってるメリットとしては、リボンマイクの場合、マイクのアウトとそれを受けるアンプのインピーダンスのマッチングが凄く大事なんですよ。アクティブのリボンマイクの場合、そのインピーダンスのマッチングが一番良いところで作られているので、そのリボンが持っている最大の良さが出せるんですよね。

大村:なるほどね!

NAKAI:最近ね、プリアンプとかでアンプ側の入力インピーダンスを変えられるものが出てきているので、ちゃんと理解して使えれば一番良いところを探し出せるんです。リボンマイクはマイクのプリとカプセルが近いところにあるので、インプットのインピーダンスをしっかりと合わせることでリボンの最大値が出せます。今録ったR-122は、始めからその最大値がちゃんと出ている音がしています。

澤田: なるほど〜。

NAKAI:さっきのAudio-Technicaもそうですよね。

澤田:基本的にはパーツは同じなんですか?R-121とR-122って。

NAKAI:エレメントは同じです。丁度、R-121の上と下のロールオフがスパンって開いた感じ。で、低域の締まりは今のR-122の方が全然良いんですよね。だから僕はベースアンプによく使います。

一同:ふーん。

NAKAI:後、ちょっとレトロっぽいドラムを録りたいときは、オーバーヘッドにコレを使いますね。

澤田:なるほど、なるほど。

NAKAI:丁度いいんです。

一同:へぇー。

NAKAI:ドラムのオーバーヘッドにいいですよ。普通のジャズっぽいのだとコンデンサーマイクとか使いますけど。

澤田: 今度、バンド全てにRoyerを立てて録ってみるっていうのはどうですか?

NAKAI:そうそう、RoyerとMojaveだけで十分にとれちゃいますしね。十分っていうか、普通にEQとか要らないぐらいで録れますよ!

澤田: スタンダードって言われる"セット"vs"Royer"だけを並べたセットを比較する回も面白いですね!

NAKAI:19世紀と21世紀のマイキングね。

大村:じゃぁ、そのためにスペシャルバンド作らないと(笑)

NAKAI:俺、歌っちゃおうかな(笑)

Royer Labs/R-122V
★122V試聴中


澤田: いいっすねぇ。

NAKAI:いいですねぇ。やっぱり。これは、R-122Vっていうチューブマイクです。バキュームチューブのVです。R-122のマイクプリの内蔵アンプがソリッドステートから真空管に変わったっていうだけなんだけどね。真空管だから暖かいんじゃなくて、ソリッドステートにありがちな耳につく辺りが無い感じです。

大村:あの冷たい感じが減ってますよね。

NAKAI:そうそう。後、電気的に起きるオーバーシュートってのがあって、こうパッて立ち上がったときに、ホントは、そこで止まるはずが、上がり過ぎてたりするんだけど、真空管だとかなり緩和される感じ。無くなる訳ではないんですけど、オーバーシュートの倍音がソリッドステートと真空管だと違うんですよね。その辺が微妙に影響してこういうキャラになるんですよね。

一同:いいですねぇ。

★122Vをもう一度試聴


NAKAI:ただでさえR-122って良い音なのに、真空管になると中域からの情報量がより増えた感じがしますよね。

大村:オケとの馴染みが良いね〜。

澤田: アンプの前の音をそのまんま録れてるイメージがありますね。

NAKAI:そうそうそう。ギターリストが作る音って、アンプの前でつまみをいじりながら直ぐ前で聴こえてくる音であって、『少し離れてチェックして』みたいな感じには音を作らないから、122Vの様な音が録れるのは凄くいいことなんですよね。

★オケと122Vを再び再生


大村:NIRVANAじゃん(笑)

NAKAI:出来ましたね!

Royer Labs/SF-24V
NAKAI:続いては、ステレオで面白いマイキングをお見せしますよ。Royer Labs/SF-24Vを試してみましょう。

★SF-24V試聴中


NAKAI:やっぱステレオってすごいな。なるほどなぁ。少しポジションを変えてみましょう。

★SF-24V 2cm近づけてみました。



NAKAI:僕はね、結構好きなんですよ。前に出る感は押さえられるんだけど、明らかなステレオ感があるのでバッキングとかにする時にダブらなくていいというメリットがあります。

大村:それはいいなぁ。

NAKAI:1本でちゃんとガツっていう感じです。

大村:向こうだと最近ダブ(同じフレーズを2回弾いて左右)ってないやつ多いよね。

NAKAI:でね、よくクローズマイクとルームマイクを混ぜるんですけど、それよりもこっちの方が全然位相とかタイミングとかがズレないんですよね。例えば、さっき弾いたトラックの中でなんか明るめのものを真ん中に置いたりしてみるだけで、結構美味しい音になると思いますよ!

★R-122Vを混ぜてみた
<

NAKAI:これでオケが完成してる感じですよね。で、ステレオってモノにすることも出来るんですよ。

★SF-24Vモノにして試聴


澤田: ステレオで録音しようかなって思うタイミングってどんなときですか?

NAKAI:モノ音源。モノ音源こそステレオで録りたいんです。

澤田: その意図は?モノラルの音像を大きくしたいとかですか?

NAKAI:そう。結局経験上になるんですけど、ただステレオで録ればいい訳ではなくて、Blumlein(ブルムライン)っていう基本的なマイキングの仕方があるんですね。この録り方をするとモノラルとのコンパチが良くなるから、後からどうしてもモノラルにしたいときはモノラルに出来るんです。で、それをちょっと広げてる感じです。90度の10時、2時とかでも使えるし、フルオープンでも使えるし、空気感が全然違うんですよね。我々の耳はステレオなんで、我々が聴いてる音により近くなります。

DAWの時代にチャンネル数が増えることはある程度は問題ないので、試してみるといいと思いますよ。最近やった仕事にストリングスの一人多重録音をステレオで録ったんですよ。ただトラックを並べいくだけでも空気感があるので繋がるんですよね。カルテットだからって、マイクを4本立ててモノラルで録ると、各パートの間の音が単に4つあるだけなんですけど、ステレオで録るとちゃんと空気感があるので一体感が出るんですよ。

これは僕がブルース・スウェディン(マイケル・ジャクソンのエンジニア)の影響で、モノに対してステレオで録るんですけど、それこそ『スリラー』とか、あぁいった音源の良さっていうのはこういうとこにあるんですよ。ステレオで録ったからって広がってるんじゃなくて、前後左右ができるんですよね。

澤田: 空間を感じられるってことですね。

大村:世界観あるもんね。スリラーとか。

NAKAI:部屋も選ぶしマイキングも色々面倒くさい部分もあるんですけど、ステレオのほうが好きなんですよね。SF-24Vもそうだし、普通のコンデンサーのステレオマイクもあるんだけど、すごい使い道があるしお薦めですよ。ステレオでありながらモノコンパチがある。モノコンパチは色んな使い道ができるから。

ちなみにこれは、ギターアンプのスピーカーが一発だったらすっごい綺麗に録れるんですよ。で、今回なんでこういう結果になってるかというと同時に4つ鳴っているスピーカーのうち1つのスピーカーしか録ってないからこういう風になっちゃうんです。まぁ、ステレオで録るなら普通にど真ん前にポンッて立てた方が一番良いのかもしれない。

Shure/KSM313
★Shure/KSM313視聴中

NAKAI:(リファレンスのR-121に比べて)キャラが違いますね〜。

澤田: キャラ違うけどいいなぁ。

NAKAI:悪くはないですね。マイクの位置をもう少しいじるともっと良くなりますね、これ。パッと聴いたときは派手でいいんだけど、固いし、色んなところで邪魔になるかもしれないから、さっきの位置から今の所まで2cmくらい動かしたから、その間ぐらいがいいかもしれない。

NAKAI:そう。なんか、意外と不良っぽい音がする。

澤田: ロックな感じですか?

NAKAI:うんうんうん。

大村:でも、これなにが良いって見た目でしょ!(笑)

一同:見た目(笑)

澤田: これはね、元々Crowley and Trippってブランドのマイクで、何年か前にShureに吸収されたんですよ。

大村:あぁ。通りでShureっぽくないって思った。ロックと言えばこのカラーリングだよね。俺のギターも赤だからね(笑)
Shure/KSM353
澤田: では、最後に同じくShureのKSM353で!

★Shure/KSM353視聴中


大村:ギターっぽい!出てる音そのままって感じ。

NAKAI:なるほどね。多分これはね、外に2cm、内に1cm動かしたらかなり近い音になるかもしれない

★KSM353 外に2cm、内に1cm動かしてみました。


NAKAI:いいな〜。

澤田: 今の位置いいですね。低音増やした感じですよね。

NAKAI:ちょっとだけ増えましたね。まぁ、すでに6 inch以内だから既に近接効果が始まってるエリアなので、あんまり変わらないんですけど。

澤田: 上を逃がしてあげた感じですか?

NAKAI:そう、そんな感じ。上の上を逃がした感じです。で、もう少しなんか肉声っていうか弾いた感じを残した感じです。

レコーディングを終えて
澤田: お疲れ様でした!今回いろいろとレコーディングしてみましたが、改めて良さを感じたマイクは有りましたか?

NAKAI:色んなマイクを試した結果、やっぱりR-121にいくかもしれない。まぁ、後はR-122Vですかね。

澤田: 今回、R-122Vを使用してみてどうでしたか?

NAKAI:いいですね。ベースアンプとかに使いたいですね。ギターはやっぱり、最終的な上がりを考えてR-121ですかね。ちょっと下のモヤってダブつきも含めて、ギターアンプあぁいう音してると思うし、それを整えた音がR-122ですよね。R-122Vだと低音が締まるし、ピッキングなどのエグさがちょっと緩和されるので、ベースアンプとかはかなり向いてると思うんですよね。ソロだとまた違うのかもしれないですけど。意図的にバッキングをR-121でやって、ソロをR-122で録るのも距離感が出ていいかもしれない。

で、Audio-TechnicaのAT4047MPを最近使い始めたんだけど、良かったですよね。リボンマイクとは違うコンデンサーの良さとかね。でも、結構似てたなぁっていう所がびっくりしましたね。後はなんだろなぁ。今日はいっぱい録ったもんなぁ。

澤田: 普段使われてない製品の中で、今度試しに使ってみようかなと思ったものとかありましたか?

NAKAI:KSM313が面白かったですよね。今回試したやつみんな良かったかなぁ。

澤田: そう、みんな良かったですよね!

NAKAI:やっぱりマイクの特性でマイキングの場所が変わります。それのリファレンスになっていたのが、R-121とR-122Vの2つだったので。この2本がずば抜けて良いというか、ギターアンプを録るっていうことにおいては、一番自然な音で録れるんです。

澤田: 弾いてる側はどうですか?聴こえてる音で弾きやすさって変わります?

大村:厳密にいうとやっぱり違うよね。ブースにいると録っている音のみを聴くわけでしょ。マイクが違うことによって音の遠さやレスポンスが変わるから、確実にプレイも変わる。そういうことも考えてくれるエンジニアだと、本当にマイキングも弾きやすくて、且つ音が良いってことがあるんだよね。

NAKAI:そうなんですよね。

大村:色んな要素があるかもしれないけど。なんか、今日ノるなぁってときはそういうことなのかもしれない。

澤田: 後でゆっくり録ったのを聴きながら、大村さん的に良かったものを選んでもらうからね。

大村:俺もう決まってるけどね!

澤田: えっそうなの?どれ?

大村:さっきNAKAIさんが言ってたR-121とR-122Vの2本でしょ!圧倒的にいい。

澤田: じゃぁ、もう終わり!(笑)

大村:特に真空管が入ってたの(R-122V)だとねぇ、さっき話題に出てた“弾きやすさ”とかノリの出し方はやりやすかったし。後は、単純にR-121はやっぱり音が好だったかな。

澤田: そのまんまで完成って感じだもんね。

大村:まっ、用途によって全然違うけどさぁ。

NAKAI:R-122Vの方は、録音っていうプロセスによって失われがちな情報がそのまま残ってる感じで、R-121は多少情報は無くなっているんだけど、ギターの美味しい部分は残ってるんですよね。

澤田: かっこいい無くなり方してますよね!

NAKAI:そう、ミックスなんかで削らないといけないような所が削られてる感じですね。

澤田: ありがとうございました。ということでエレキ終了で、第一部完です!
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